· 

文書偽造の罪には、有形偽造と無形偽造

 文書偽造の罪には、有形偽造と無形偽造の二つの形態があり、これらはそれぞれ異なる方法で文書を偽造する行為を指します。

 

1. 有形偽造

 有形偽造とは、文書の作成名義を偽る行為を指します。

 これは、誰がその文書を作成したかという名義を偽って、あたかも他の人物が作成したように見せかけることです。

 

 例:

  • 市区町村長が発行するべき印鑑証明書を、個人が勝手に作成し、市区町村長が作成したように偽る行為。
  • 他人のサインを偽造して、まるでその人が書いたかのように見せかける行為。

ポイント:

  • 内容の真偽に関係なく、作成者が本来の名義人でない場合に成立します。

 たとえ文書の内容が正しくても、作成名義が偽られていれば「偽造」として処罰の対象になります。

  • 公文書(例: 市区町村長が発行する書類)を偽造した場合には、公文書偽造罪が成立します。

2. 無形偽造

 無形偽造は、内容が虚偽の文書を作成する行為を指します。

 この場合、文書の作成名義は正しいものの、書かれている内容が虚偽である場合に当たります。

 例:

  • 市区町村長が実際には確認していない事実について、虚偽の内容で印鑑証明書を発行する行為。
  • 会社の経理担当者が、存在しない取引をあたかも存在したかのように文書に記載する行為。

ポイント:

  • 文書の作成者名義自体は正当ですが、内容が虚偽である場合に無形偽造が成立します。
  • 公務員が虚偽の内容で公文書を作成した場合は、虚偽公文書作成罪となります。

3. 変造

 変造とは、真正な文書に手を加えて改変することです。

 これは、元々正当な文書が作成された後に、その一部を不正に改変して、異なる内容や価値を持つ文書に作り替える行為です。

 

 例:

  • 正当な契約書の日付や金額を不正に書き換える行為。
  • 既に発行された免許証やパスポートの情報を改変する行為。

ポイント:

  • 文書の本質的な部分(名義や重要な情報)が改変された場合は「偽造」とみなされますが、文書の本質でない部分を改変する行為は「変造」と呼ばれます。

4. 行使の目的

 文書偽造罪や虚偽公文書作成罪が成立するためには、行使の目的が必要です。

 行使とは、偽造または虚偽の文書を他人に見せることや、その文書を使って相手を欺く目的を指します。

 

行使とは:

  • 相手にその文書の内容を理解させたり、認識できる状態にすることを言います。

 例として、偽造した契約書を相手に提出して信用させ、利益を得る行為が含まれます。

 

まとめ

  • 有形偽造は、作成名義を偽る行為です。たとえ内容が正しくても、名義が偽られていれば罪に問われます。
  • 無形偽造は、内容が虚偽の文書を作成する行為です。名義は正当でも、虚偽の内容が記載されている場合に成立します。
  • 変造は、元々正しい文書に手を加えて改変する行為です。

 いずれの場合も、他人にその文書を使って認識させる行使の目的がある場合に罪が成立します。

 

 このように、文書偽造の罪は、その行為が社会の信用を害するものであり、作成名義や内容に虚偽があるかどうかに基づいて処罰されます。