過剰避難、誤想避難、誤想過剰避難の解説
これらの概念は、緊急避難に関連する刑法の例外的なケースであり、緊急避難の適用範囲やその限界を示しています。
それぞれの概念について説明します。
- 過剰避難
過剰避難は、緊急避難の条件を満たしつつも、その行為が避けようとした害の程度を超えてしまった場合です。
具体的には、緊急避難が成立するためには、避けようとした害と生じた害の程度が均衡している必要がありますが、過剰避難ではこの均衡が保たれていないため、違法性は阻却されません。
例:
例えば、火事から逃げるために他人の家に無断で立ち入る場合、その家に傷をつけたり物を壊したりした場合、避難のための行為が過剰であったと判断されることがあります。
また、犯罪から逃れるために暴力を振るい、その結果として相手に重傷を負わせた場合も過剰避難に該当します。
過剰避難の場合、違法性は阻却されませんが、情状により刑の軽減または免除が考慮されることがあります。
過剰な行為は違法性が残るため、刑事責任が問われますが、避難のために行ったという事情が考慮されるのです。
- 誤想避難
誤想避難とは、実際には現在の危難が存在しないのに、それが存在すると誤信して避難行為を行った場合です。
これは「誤認」の問題であり、現実には危険が存在しないが、行為者がその危険があると信じて行動した場合に該当します。
例:
実際には火事が発生していないのに、その地域に火事があると信じて避難行動を取る場合です。
この場合、違法性は阻却されませんが、故意はないため、少なくとも故意犯にはなりません。
しかし、誤認が過失に基づくものであれば、過失がある場合には過失犯として責任を問われる可能性があります。
- 誤想過剰避難
誤想過剰避難とは、現在の危難が実際には存在しないのに、存在すると誤信し、さらにその過剰な行為を認識している場合です。
つまり、誤って危険があると信じて避難行為を行い、その行為が過剰であることを認識している場合です。
例:
誤って火事があると信じて、必要以上の破壊行為を行い、その過剰さを自覚している場合です。
誤想過剰避難の場合も、違法性は阻却されません。
過剰な行為に対する責任が問われるため、実際には存在しない危険に対して過剰な対応をしたことにより、違法性が問われることになります。
- まとめ
これらの概念は、緊急避難に関する適用範囲や限界を示し、法的にどのような状況で責任が問われるのかを理解するために重要です。
過剰避難や誤想避難、誤想過剰避難は、緊急避難の基本的な要件を超えてしまった場合や誤認が絡む場合の扱いについての指針を提供しています。
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