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形式的違法論と実質的違法論の違い

 刑法における違法性阻却事由について、形式的違法論と実質的違法論の違いです。

 以下にそれぞれの考え方を再確認し、例も挙げながら説明します。

  • 形式的違法論

 形式的違法論は、法律に明示的に規定された違法性阻却事由のみを認める立場です。

 すなわち、刑法典に記載されている違法性阻却事由(正当防衛や緊急避難など)以外の事由は認めず、法文の枠内で判断を行います。

 このアプローチでは、法律に定められたもの以外の違法性阻却事由は原則として認められません。

  • 実質的違法論

 実質的違法論は、構成要件に該当する行為が、実質的にその行為が正当化される事情が存在するかどうかを判断します。

 形式的な法文の枠にとらわれず、実質的な事情を考慮して、違法性が阻却されるかどうかを判断する考え方です。

 つまり、法律に明記されていない場合でも、その行為が社会通念上正当であると認められれば、違法性が阻却されるとする立場です。

 

例:

  • プロの格闘技:

 プロの格闘技における殴り合いは、業務の一環として行われるため、刑法35条に基づき違法性が阻却されます。

 これは形式的に規定された違法性阻却事由を適用した結果です。

  • アマチュアスポーツ:

 アマチュアスポーツは「業務」には該当しませんが、確立されたルールに従って行われる限り、その行為は社会的に正当と見なされるため、違法性が阻却されるとするのは実質的違法論に基づく判断です。

 

 実質的違法論では、法律に明記されていない場合でも、社会的に正当とされる事情があれば、違法性が阻却されると考えます。

 

 形式的違法論は、法文に基づく厳密な適用を重視する一方で、実質的違法論はより柔軟に社会的な正当性を考慮します。