· 

名義預金の問題についての考察

 裁決事例の要旨をもとに、名義預金の問題についての考察を整理します。

 

裁決事例の要旨と所感

  • 令和3年1月20日 関東信越国税不服審判所

誰の名義?子供名義

 裁決事例要旨請求人名義の定期貯金が、実際には被相続人の相続財産として認定された事例。

 保険契約の保険料は被相続人が負担しており、貯金の管理も被相続人の配偶者が行っていたため、貯金は被相続人の財産とされました。

 

 所感保険契約の保険料負担者が被相続人であり、貯金の管理も被相続人の配偶者が行っていたため、名義が子供であっても実質的には被相続人の財産と認定されました。

 

 保険契約者が子供であった場合の贈与の問題も考慮されますが、実態として名義預金とされた事例です。

  • 令和3年5月12日 熊本国税不服審判所

 誰の名義?被相続人名義(逆名義預金論点)

 裁決事例要旨歯科医院の名義口座から被相続人名義の口座への資金移動があったが、その資金の原資が医院の収入であると認定されたため、被相続人の相続財産には含まれないとされた事例。

 所感名義預金でも、原資が実際の業務収入である場合、名義が被相続人であってもその財産が相続財産には含まれないとされる事例。

 逆名義預金でも、実態が明確であれば納税者が勝つこともあります。

  • 令和3年9月17日 金沢国税不服審判所

 誰の名義?家族名義

 裁決事例要旨贈与証を基に贈与が行われたが、管理状況や受贈者の認識によって贈与の成立が判断された事例。

 長男への贈与は贈与証の内容や管理状況から認められたが、長女への贈与は認められなかった。

 所感贈与証があるものの、管理状況や受贈者の認識によって贈与の成立が左右される事例。

 贈与証よりも贈与契約書が望ましいとされる理由が示された事例です。

  • 令和3年10月1日 名古屋国税不服審判所

誰の名義?子供名義

 裁決事例要旨名義預金の原資を証明できなかったため、名義が子供であっても相続財産とされる事例。

 所感名義預金の原資の証明が困難であったため、名義が子供であっても相続財産とされる事例。

 立証責任が納税者にあり、証明が不十分な場合には負けることがあります。

  • 令和4年2月15日 名古屋国税不服審判所

 誰の名義?配偶者名義、子供名義

 裁決事例要旨現金及び預貯金の原資が特定できず、被相続人の収入と混在している可能性があるため、相続財産として断定することはできないとされた事例。

 所感預貯金や現金の原資が特定できない場合、相続財産としての帰属が断定できないことがあります。

 収入の混在や証明不足が影響する事例です。

 

まとめ

 名義預金の帰属については、名義だけでなくその原資や管理状況を総合的に判断することが重要です。

 

 名義人や管理者、原資の出えん者の情報を正確に把握し、証明することが求められます。