住宅取得資金贈与の3つの制度
1. 措置法70条の2(住宅取得等資金の非課税)
制度の内容:
一定金額まで非課税で住宅取得資金を贈与できる。
適用枠:
- 省エネ等住宅: 1,000万円
- 上記以外: 500万円
- 適用期間: 平成21年創設、現行制度
- 相続財産への加算: 不要
- 選択: 暦年贈与
2. 措置法70条の3(相続時精算課税選択の特例)
- 制度の内容: 60歳未満でも住宅取得資金を精算課税で贈与できる。
- 適用枠: 2,500万円
- 適用期間: 平成15年創設、現行制度
- 相続財産への加算: 必要
- 選択: 精算課税
3. 旧措置法70条の3の2(住宅取得資金特別控除の特例)
- 制度の内容: 精算課税贈与に1,000万円上乗せできる。
- 適用枠: 1,000万円(精算課税と合わせれば3,500万円)
- 適用期間: 平成15年創設、平成21年末廃止
- 相続財産への加算: 必要
- 選択: 精算課税
Q&A
Q: 措置法70条の3(相続時精算課税選択の特例)で60歳未満で贈与をした年の翌年以降にさらに精算課税で贈与したい場合、60歳になるまで待たないといけないのか?
A: 60歳未満でも精算課税贈与が可能です。
メリット・デメリット
相続時精算課税制度のメリット
- 令和6年1月1日以降は基礎控除110万円が創設され、贈与税申告も不要で相続財産に加算も不要。
- 一度に多額の贈与が可能。
- 収益を生む財産を贈与した場合には贈与後の収益が受贈者に帰属し、相続税の節税になる。
- 将来値上がりする財産を贈与した場合には相続税の節税になる。
- 将来相続税が基礎控除以下の場合には早期に財産を移転できる。
相続時精算課税制度のデメリット
- 暦年贈与に戻れない。
- 贈与した財産が値下がりした場合に相続税の負担が重くなる。
- 受贈者が先に死亡した場合に税負担が重くなる。
- 贈与財産は小規模宅地等の特例の適用ができない。
- 相続に比べ流通税(不動産取得税、登録免許税)の負担が重くなる。
暦年贈与との比較
暦年贈与 精算課税贈与
- 贈与者 制限なし 60歳以上の父母または祖父母
- 受贈者 制限なし 18歳以上の直系卑属である推定相続人または孫
- 基礎控除 年間110万円 年間110万円
- 特別控除額 なし 一生涯2,500万円
- 税率 10%~55%の累進税率 一律20%
- 非課税枠以下の申告義務 申告不要 申告必要
- 届出義務 不要 相続時精算課税選択届出書が必要
- 相続財産に加算する金額 3年間のみ(令和6年以降の贈与は7年間) 過去の贈与すべて(令和6年以降は110万円以下は加算不要)
- 受贈者が先に死亡 特に論点なし 受贈者の相続人が承継
- 贈与税額控除 還付なし 還付あり
- 相続開始年の贈与 相続財産に加算(相続または遺贈により財産を取得していない人は贈与税申告) 相続財産に加算(令和6年以降は110万円以下は加算不要)
相続時精算課税贈与を適用すべきケース
- 7年以内に相続が発生しそうな場合: 精算課税を選択すると有利。
- 年間110万円の贈与でも十分に相続税の節税効果が高い場合: 財産規模やシミュレーションにより判断。
- 将来の相続税が基礎控除以下で早期に財産を移転したい場合: 精算課税贈与が最適。
- 将来確実に値上がりする財産を保有している場合: 精算課税贈与が有利。
- 収益を生む財産を保有している場合: 収益が受贈者に帰属するため、節税につながる可能性がある。
暦年贈与 精算課税贈与
- 贈与者 制限なし 60歳以上の父母または祖父母
- 受贈者 制限なし 18歳以上の直系卑属である推定相続人または孫
- 基礎控除 年間110万円 年間110万円
- 特別控除額 なし 一生涯2,500万円
- 税率 10%~55%の累進税率 一律20%
- 非課税枠以下の申告義務 申告不要 申告必要
- 届出義務 不要 相続時精算課税選択届出書が必要
- 相続財産に加算する金額 3年間のみ(令和6年以降の贈与は7年間) 過去の贈与すべて(令和6年以降は110万円以下は加算不要)
- 受贈者が先に死亡 特に論点なし 受贈者の相続人が承継
- 贈与税額控除 還付なし 還付あり
- 相続開始年の贈与 相続財産に加算(相続または遺贈により財産を取得していない人は贈与税申告) 相続財産に加算(令和6年以降は110万円以下は加算不要)
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