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即時取得とは

 即時取得とは、動産の占有を信頼して取引を行った者が、前所有者の権利に関係なく、その動産の所有権を取得できる制度です。

 

 これにより、善意で取引した者を保護し、取引の安全と円滑を図ります。即時取得が成立するためには、以下の要件が必要です。

 

1. 目的物が動産であること

 即時取得が成立するのは、あくまで「動産」に限られます。

 例えば家具や機械などの物品が対象です。

 ただし、登記された船舶や自動車、航空機など、動産であっても登記制度があるものは即時取得の対象外とされています。

 また、金銭(現金)についても、即時取得は原則として成立しません(例外として記念硬貨などは対象になります)。

 

2. 前主が処分権限を持たない者であること

 即時取得の対象となるのは、前所有者(前主)が処分権限を持たない者、すなわち本来の所有者ではないが占有している者との取引に限られます。

 もし処分権限がある正当な所有者から購入した場合は、即時取得の問題は生じません。

 

3. 有効な取引行為が存在すること

 即時取得には、売買や譲渡、質権設定契約などの有効な取引行為が必要です。

 単なる包括承継(相続など)は含まれません。つまり、当事者間で正当な法律行為が行われていることが要件となります。

 

4. 平穏・公然・善意・無過失であること

 即時取得を主張するには、以下の条件が求められます:

  • 平穏:   強制的な手段や暴力を用いず、穏やかに占有が開始されたこと。
  • 公然:   隠された取引ではなく、一般に認識される形で占有が開始されたこと。
  • 善意:   前主に処分権限がないことを知らなかったこと。
  • 無過失:  前主が所有者でないことについて、自身に過失がなかったこと。

 これらの条件は、即時取得を主張する者が立証する必要はなく、推定されます。

 

5. 比較: 時効取得と即時取得

 即時取得と似た制度に、物の占有を続けることによって所有権を取得する「時効取得」があります。

 10年間の短期取得時効でも、「平穏・公然・善意・無過失」が要件となりますが、即時取得と異なり「無過失」は推定されません。

 

 即時取得は、動産取引の安全性を確保し、第三者の権利を保護するための重要な仕組みです。