この事案は、相続税申告における財産の帰属問題に関するもので、税務署と納税者間で争われたものです。
以下は、主要な点についてのまとめです。
1. 事案の概要
相続税申告において、税務署が指摘した「被相続人やその家族名義の預貯金の口座から出金された現金」や「家族名義の預貯金」について、納税者がこれらが被相続人の配偶者の財産であり、相続財産には含まれないと主張した事案です。
2. 本件相続の概要
相続開始日: 平成30年2月
被相続人: 父
相続人: 配偶者、長男、二男
3. 時系列
- 配偶者による現金の引出し平成26年2月12日から相続開始日までに、複数の口座から合計85,774,000円を引き出した。
- 相続開始被相続人が平成30年2月に死亡。
- 遺産分割協議平成30年8月15日と10月30日の2回にわたって協議が行われ、遺産分割協議書が作成された。
- 相続税申告書の提出平成30年12月までに相続税申告書を提出。長男が税理士として申告を行い、一部現金が計上された。
- 税務調査令和元年11月25日に税務調査が実施され、現金65,000,000円が提示された。令和元年12月11日に追加で12,000,000円が見つかった。
- 更正処分令和2年4月21日に税務署が更正処分を行い、相続財産の申告漏れを指摘。
- 審査請求令和2年8月19日に納税者が更正処分等に対して審査請求を行った。
4. 争点1(調査手続きの違法性)
国税の調査手続きに瑕疵がある場合、課税処分が取消される可能性があるが、本件では調査手続きに重大な瑕疵はないとされ、納税者の主張は認められなかった。
5. 争点2(理由提示の要件)
行政手続法第14条第1項に基づく理由提示の要件が満たされていると判断され、納税者の主張は認められなかった。
6. 争点3(本件現金等の相続財産帰属)
税務署の主張
- 本件現金: 出金された現金は被相続人の財産であると主張。
- 本件定期預金: 被相続人または配偶者の財産であると主張。
- 本件各貯金: 被相続人の財産であると主張。
- 生涯収入: 被相続人の生涯収入と配偶者の生涯収入の比率から、ほとんどの金融資産が被相続人に帰属するとの見解。
納税者の主張
- 本件現金: 現金の出捐者が特定できず、出金された現金が被相続人の財産であるとはいえないと主張。
- 本件定期預金: 原資の負担者を特定できないと主張。
- 本件各貯金: 原資の負担者を特定できず、出捐者が被相続人であるとはいえないと主張。
- 生涯収入: 被相続人および配偶者の生涯収入に関する推計が不正確であると主張。
7. 結論
国税不服審判所は、税務署の主張を支持し、本件現金等が被相続人に帰属する財産であると認定しました。
納税者の主張は認められず、更正処分が適法であるとされました。
この事案では、相続税の申告において、財産の出捐者や原資の特定が争点となっており、税務署の主張が認められる形で処理されています。
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