憲法14条で規定されている「法の下の平等」は、平等に関する重要な原則です。
この「平等」の捉え方について、形式的平等、実質的平等、相対的平等の3つの視点から説明します。
1. 形式的平等
形式的平等は、すべての個人を法的に同じように扱うことを重視する考え方です。
これは「機会の平等」とも呼ばれ、法律上の扱いに差をつけないことに重点を置いています。
例えば、すべての人に選挙権を与えることや、男女同じ仕事に応募できる機会を保障することが形式的平等の一例です。
形式的平等の特徴は、表面的には平等を守りますが、社会的や経済的な背景によって平等の効果が実現しない場合があります。
つまり、機会は平等でも、結果は必ずしも平等とは限らないのです。
2. 実質的平等
実質的平等は、個々の社会的・経済的な背景に配慮し、特に弱者を保護することで平等を実現しようとする考え方です。
これは「結果の平等」とも呼ばれ、単に機会を与えるだけでなく、その結果として平等な状態を目指します。
例えば、障がい者に対して働きやすい環境を整えたり、低所得者に対する社会保障制度を提供することが実質的平等に当たります。
実質的平等の特徴は、形式的に平等な扱いでは足りない場合に、特定の人々により厚い保護や支援を行うことで、実際の生活や社会的な平等を追求します。
3. 相対的平等
相対的平等は、人々の異なる状況(年齢、性別、職業など)を考慮し、同じものは同じように、異なるものは異なるように扱うという考え方です。
例えば、成人と未成年に対して法律の適用を異なる形で行うことや、妊娠中の女性に特別な配慮をすることが相対的平等に基づいた区別です。
相対的平等の特徴は、単にすべてを一律に扱うのではなく、合理的な理由に基づいた区別を認めることで、真の平等を目指します。
このため、不合理な差別は禁止され、合理的な区別は許されます。
4. 「法の下の平等」とは?
憲法14条の「法の下の平等」は、すべての国民が法律に対して平等に扱われることを意味しますが、この「平等」の解釈には2つの立場があります。
- 立法者拘束説:
これは、法律の内容そのものが平等でなければならないという考え方です。
つまり、法律の制定者(立法者)も平等原則に従う必要があり、法律そのものが差別的であってはならないという立場です。
- 立法者非拘束説:
これは、法律の適用のみが平等であればよく、法律の内容自体は平等である必要がないという立場です。
ただし、判例や通説は前者の「立法者拘束説」を支持しています。
5. まとめ
- 形式的平等:
法的に同じ扱いを保障し、機会の平等を重視する。
- 実質的平等:
社会的・経済的弱者への支援を行い、結果として平等を目指す。
- 相対的平等:
各個人の異なる状況に応じて合理的な区別を認め、平等を実現する。
憲法14条で規定される「法の下の平等」は、形式的平等と実質的平等を両立させつつ、相対的な平等を基礎に、合理的な区別を認める柔軟な原則として解釈されています。
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