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基本的人権と公共の福祉

 日本国憲法における「基本的人権」と「公共の福祉」についです。

 

1. 基本的人権とは?

 基本的人権は、全ての人が生まれながらに持っている「侵すことのできない」権利です。

 日本国憲法では、以下の条文でこれを強調しています。

第11条:

 「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。…侵すことのできない永久の権利として保障される。」

第97条:

 「基本的人権は、過去の試練を乗り越え、未来の国民にも永久に保障される。」

 

 これにより、生命・自由・財産など、国民の権利が尊重されることが保証されています。

 しかし、これらの権利は無制約ではない点が重要です。

 

2. 基本的人権の制約と「公共の福祉」

 基本的人権が無制限に認められると、個々人の権利が衝突し、社会秩序が乱れてしまいます。

 

 そのため、人権の行使には一定の制約が必要です。この制約を正当化するために憲法が定めているのが「公共の福祉」です。

  • 公共の福祉とは?

 「公共の福祉」とは、個々人の利益よりも、社会全体の利益や秩序を優先させるという考え方です。

 これは、他人の権利や自由を守りつつ、全体の調和を図るために使われます。

 

 憲法には、公共の福祉に関連する条文がいくつかあります。

第12条:

 「国民は、基本的人権を濫用してはならず、常に公共の福祉のために利用する責任を負う。」

第13条:

 「生命、自由及び幸福追求に対する権利は、公共の福祉に反しない限り尊重される。」

第22条:

 「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住・職業選択の自由を有する。」

第29条:

 「財産権は、公共の福祉に適合するように法律で制限される。」

 

 これらの条文は、個々人の権利が他人や社会全体に悪影響を与えない範囲で尊重されるべきだという考え方を示しています。

 

3. 公共の福祉の解釈に関する学説

 公共の福祉をどのように理解するかについては、学説がいくつかあります。

  • 一元的外在制約説:

 公共の福祉は、個々の人権に対する外からの制約として機能すると考える説です。

 つまり、人権の行使が他の人権や社会に害を及ぼす場合、外部から制限が加えられるという考え方です。

  • 内在・外在二元的制約説:

 この説は、公共の福祉が内在的な制約(人権の本質に基づく制約)と、外在的な制約(社会全体の利益を守るための制約)の両方を含むという考えです。

 つまり、個々の権利には元々の制限があり、それに加えて公共の福祉という外部の制約が加わるというものです。

  • 一元的内在制約説:

 公共の福祉は、基本的人権そのものに内在する制約であり、特別な外部の制約を設けなくても、社会全体の利益を考慮した制限が既に含まれているとする説です。

 

4. まとめ

 基本的人権は、個々人が自由に権利を行使できる重要なものですが、他人の権利や社会の秩序を乱さない範囲で行使されるべきです。

 

 その制約として「公共の福祉」という概念があり、個人の権利と社会全体の利益をバランスよく調整する役割を果たしています。

 

 公共の福祉の具体的な解釈は異なる学説がありますが、いずれも基本的人権を尊重しつつ、社会全体の調和を保つことを目指しています。