「幸福追求権」について、権利性肯定説と権利性否定説の視点から、解説します。
1. 幸福追求権とは?
幸福追求権は、憲法第13条に基づく「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」の一部として認められるものです。
憲法第13条は、国民が幸福を追求する権利を持ち、それが「公共の福祉に反しない限り」尊重されるべきだとしています。
ただし、憲法13条は具体的な権利を列挙していないため、幸福追求権が新しい人権として具体的にどこまで認められるかについては議論があります。
2. 権利性肯定説
権利性肯定説は、幸福追求権が具体的な人権として認められるという立場です。
- 例示列挙の考え方:
憲法14条で挙げられている基本的人権(平等権など)は、あくまで例として列挙されているに過ぎないと考えます。
つまり、憲法はすべての権利を明示的に列挙しているわけではなく、新たな状況に応じて新しい権利を認める余地があるという考えです。
- 13条の役割:
憲法13条は「個人の尊厳」や「幸福追求の権利」を保護するため、将来に向けて新しい人権も含めた広範な権利を規定していると解釈されます。
社会が変化する中で、新しい権利が必要となるため、幸福追求権がその一例だと考えます。
この立場は、現代の環境権やプライバシー権といった新しい人権を憲法に基づいて認めるための基礎となっており、判例や通説でもこの考え方が広く受け入れられています。
3. 権利性否定説
一方、権利性否定説は、幸福追求権を具体的な人権として認めるべきではないという立場です。
- プログラム規定の主張:
憲法13条は、具体的な権利を保障するのではなく、国政の基本的な指針や目標を示す「プログラム的規定」として解釈されるべきだと考えます。
これにより、13条は幸福追求権という具体的な権利を新たに保障するものではなく、国家の施策や政策における一般的な原則を示すものに過ぎないという立場です。
- 幸福追求権の曖昧さ:
幸福追求権は非常に漠然とした概念であり、具体的な権利として認定するには曖昧すぎると主張します。
また、憲法にはすでに基本的人権が詳細に規定されているため、あえて新たに幸福追求権を具体的な権利として認める必要はないという立場です。
4. 判例・通説の立場
日本の判例や通説は、権利性肯定説を支持しています。
これは、憲法が時代や社会の変化に対応して新しい人権を認める柔軟性を持たせるために、幸福追求権を具体的な権利として捉えるべきだという考え方が広く受け入れられているからです。
5. まとめ
- 権利性肯定説:
幸福追求権を新しい人権として認め、社会の変化に応じて個人の尊厳を守るための柔軟な解釈を可能にする立場。
- 権利性否定説:
憲法13条を具体的な権利ではなく、国政の指針や目標を示す規定とみなし、幸福追求権を新しい権利として認めない立場。
結論として、現在の判例や通説は肯定説を支持し、憲法が新しい人権を認める可能性を持たせる形で解釈されています。
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