これらの裁決事例は、相続における名義預金の取り扱いやその帰属についての重要なポイントを示しています。
それぞれの事例から得られる教訓や考察は以下の通りです:
1. 令和1年9月10日 関東信越国税不服審判所 非公開裁決事例
- 名義:
妻名義
- 要旨:
妻名義の預金が被相続人の相続財産と認定された。
管理運用は妻が行っていたが、原資が被相続人のものであったため、相続財産に含まれるとされた。
- 所感:
夫婦間での預金管理は一般的であるため、名義だけで判断せず、原資が誰のものであるかが重要。
2. 平成31年4月19日 広島国税不服審判所 公開裁決事例
- 名義:
被相続人名義
- 要旨:
被相続人名義の預貯金が逆名義預金として、実際には被相続人以外の預金と主張されたが、名義、管理、原資がすべて被相続人に帰属すると認定された。
- 所感:
逆名義預金の主張には強力な証拠が必要で、名義、管理、原資がすべて被相続人に関連している場合は、被相続人の財産とされる。
3. 平成29年8月2日 東京国税不服審判所 非公開裁決事例
- 名義:
配偶者名義
- 要旨:
配偶者名義の預金が実質的には被相続人の財産であると認定された。
贈与とされるべき状況がないとされ、配偶者名義でも被相続人の財産とされる。
- 所感:
贈与の証拠がない場合、名義だけで判断せず、原資と管理状況が重要。
4. 平成29年7月5日 東京国税不服審判所 非公開裁決事例
- 名義:
相続人の妻及びその妻の親族名義
- 要旨:
贈与に関する一覧表に基づく贈与が認められず、預金は被相続人の財産であるとされた。
また、介護料名目の資金移動も認められなかった。
- 所感:
贈与を主張する場合は、証拠の正確性と具体性が求められる。
5. 平成28年12月12日 広島国税不服審判所 非公開裁決事例
- 名義:
子供名義
- 要旨:
子供名義の預金が贈与ではなく被相続人の財産と認定された。
証拠不足や管理状況により、贈与が成立していないとされた。
- 所感:
名義変更があっても、証拠が不足していると贈与として認められない。
6. 平成28年11月8日 関東信越国税不服審判所 公開裁決事例
- 名義:
子供名義
- 要旨:
子供名義の預金が贈与ではなく被相続人の財産と認定された。
預金の管理が被相続人の配偶者によって行われていた。
- 所感:
贈与の成立には、具体的な証拠が必要であり、管理状況が重要。
7. 平成28年4月20日 東京国税不服審判所 非公開裁決事例
- 名義:
被相続人名義
- 要旨:
被相続人名義の預貯金が、原資が被相続人であったとして被相続人の財産と認定された。
- 所感:
財産の名義、管理、運用の実態を総合的に判断する必要がある。
これらの事例から、名義預金に関する判断は単なる名義だけでなく、原資、管理状況、証拠の有無などを総合的に評価する必要があることが分かります。
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