この裁判(平成27年12月14日 最高裁判決)は、時効消滅した債権を自働債権(相殺に用いる債権)とする相殺の抗弁を反訴で主張することが許されるかどうかが争点となった事例です。
最高裁の見解
- 重複起訴禁止(民訴法142条)の適用:
債権を訴訟物とする別訴が係属している場合、その債権を他の訴訟で相殺の抗弁に使うことは、民訴法142条の重複起訴禁止に反するため、許されないとされています(過去の最高裁判決も参照)。
しかし、時効によって消滅した債権については特別な扱いが許されると判断しました。
- 時効消滅債権の相殺の抗弁:
時効により消滅し履行請求ができなくなった債権でも、その時効が完成する前に相殺に適していた場合、相殺に使うことができます。
この点で、本訴で扱われている債権が時効で消滅した場合、反訴でその消滅した部分を自働債権として相殺の抗弁を主張することは認められます。
この判断は、消滅時効が完成した後であっても、相殺の期待が公平に保護されるべきだという民法508条の趣旨に適合するとされています。
- 裁判所の判断:
本件では、反訴における相殺の抗弁についての判断が不十分であったため、原判決は理由の不備があると認定されました。
そのため、最高裁は原判決の一部を破棄し、さらなる審理を行うために原審へ差し戻すこととなりました。
- 結論
この裁判では、時効により消滅した債権であっても、相殺に適する場合には反訴で相殺の抗弁を主張することが許されるという判断が示されました。
この判断により、相殺に対する当事者の期待が法的に保護され、公平な扱いが確保されることが強調されました。
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