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利息制限法により、制限を超える利息や損害金

 この昭和40年9月17日の最高裁判決(事件番号: 昭和39(オ)987号)では、一定金額を超える債務の不存在確認請求に関して、訴訟物および利息制限法に基づく主張について裁判所が見解を示しました。

  • 事案の概要

 この訴訟では、上告人(債務者)が被上告人(債権者)に対して貸金債務の元本の一部について債務不存在確認を求めました。

 

 上告人は、相続した債務を含めて元本をすでに支払い済みであり、残額の一部が存在しないと主張しましたが、原審はこれを認めず、上告人の請求を全て棄却しました。

  • 最高裁の判断

 最高裁は、原審が判断を下す際に、いくつかの弁済事実に関する審理が不十分であった点を指摘し、再審理が必要であるとしました。

 特に以下の点が重要です。

  • 訴訟物(申立の範囲)についての誤解

 上告人は貸金元本の一部をすでに弁済したと主張し、残りの金額(14万6,465円)以外の部分について債務が存在しないことを確認するよう求めました。

 

 さらに、上告人の相続人も、それぞれ相続分に応じた債務の不存在を主張しました。

  • 弁済事実の審理不尽

 上告人は、複数回にわたる弁済を元本に充当したと主張していましたが、原審では一部の弁済事実(1957年12月の支払い)しか審理されず、それ以外の弁済事実についての検討が十分に行われていませんでした。

 

 最高裁は、このような不十分な審理があったことを指摘しました。

  • 利息制限法の適用

 また、利息制限法に基づく主張も問題となりました。

 

 利息制限法により、制限を超える利息や損害金は、たとえ債務者が任意に支払った場合でも、元本に充当されるべきであると解釈されます。

 

 原審はこれを十分に考慮せず、上告人の主張に対する判断を誤ったとされました。

 

 最高裁は、昭和39年11月18日の大法廷判決(民集18巻9号1868頁)を引用し、制限を超える利息部分は元本に充当されるべきであると再確認しました。

  • 結論

 最高裁は、上告人らの訴訟物(一定金額を超える債務の不存在確認請求)の範囲について、原審が正しく判断しなかったこと、また、複数の弁済に関する事実について十分な審理がなされていないことを指摘し、審理不尽の違法があるとして原判決を破棄しました。