この昭和38年2月21日の最高裁判決(昭和35(オ)480号)では、訴訟代理人に与えられた和解の権限の範囲について、以下のような判断が示されました。
事案の概要
事件は、金銭債権に関する前訴訟(貸金請求事件)において、訴訟代理人である弁護士が、依頼者のために和解を成立させる権限を持っていたかどうかが争点となりました。
具体的には、訴訟代理人が弁済期日の延期や分割払いを条件に、依頼者の不動産に抵当権を設定する和解を行ったことが問題になりました。
最高裁の判断
最高裁は、以下の点を重視して判断を下しました。
- 和解の代理権限の範囲
訴訟代理人が和解の権限を与えられていたことは明らかであり、この和解には弁済期日を延期し、分割払いとするかわりに不動産に抵当権を設定するという条件が含まれていた。
- 抵当権設定の正当性
この抵当権の設定は、金銭債権に関する訴訟における「訴訟物に関する互譲の一方法」として行われたものであり、和解の一環として正当なものであると解された。
- 代理権限の包含
前事件で訴訟代理人に与えられた和解の権限には、抵当権の設定契約を締結する権限も含まれていたと解するのが妥当であり、原審の判断を是認できるとしました。
- 結論
したがって、訴訟代理人に和解の権限が与えられている場合、その権限の範囲には、和解の条件として互譲的な措置、例えば不動産の抵当権設定のような重要な契約行為も含まれることがあると最高裁は判断しました。
この判決により、訴訟代理人の和解権限の解釈において、その範囲が広く認められることが確認されました。
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