この裁判(昭和48年4月24日最高裁判決、昭和47(オ)908)は、債権者代位訴訟における債務者の訴訟追行権について、最高裁判所が見解を示したものです。
最高裁判所の見解
- 債務者の訴訟提起の適法性
債権者が民法423条1項に基づき代位権を行使して第三債務者に対し訴訟を提起した場合であっても、債務者が当事者参加して同一の訴訟物に関する訴訟を提起することは、民事訴訟法231条の重複起訴禁止に抵触しないとされています。
この場合、債務者が訴訟を提起する特別な必要性が認められるためです。
重複起訴禁止の例外債務者が債権者の代位訴訟と同一の訴訟物に対して訴訟を提起しても、以下の理由で重複起訴禁止の原則に反しないとされています。
- 債務者の利益を保護するために訴訟提起が必要である。
債権者の代位訴訟と債務者の訴訟は併合審理され、訴訟目的が合一に確定されるため、審判の重複や既判力の抵触、被告の不必要な応訴といった不都合が生じない。
債務者の訴訟追行権の制限債権者が適法に代位権を行使して訴訟を提起し、その事実が債務者に通知されるか、債務者がその事実を認識した場合、債務者は代位権行使を妨げるような処分を行う権能を失うとされています。
したがって、この状況下で債務者が訴訟を提起することは不可能となります。
- 代位権行使の適法性の判明後の債務者の立場
債権者の代位権行使が適法であり、債権者が訴訟追行権を有していることが判明した場合、債務者はその訴訟追行権を失い、当事者適格を欠くことになります。
その結果、債務者が提起した訴訟は不適法とされます。
一方、債権者が訴訟追行権を有していないと判明した場合、債務者は訴訟追行権を失わないため、その訴訟は適法とされます。
- 結論
この判決では、債権者が代位権を行使した場合でも、債務者が同一の訴訟を提起することが重複起訴禁止に抵触しないことを示しています。
しかし、債権者の代位権行使が適法である場合、債務者は訴訟追行権を失い、その訴えは不適法となるという原則が確認されています。
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