この裁判(昭和41年1月27日最高裁判決、昭和40(オ)163)では、無断転貸が背信行為に当たるかどうか、そしてそれを回避する特段の事情の存否に関する主張や立証責任について、最高裁が判断を示しています。
最高裁判所の見解
- 無断転貸と背信行為の判断基準
民法第612条第2項では、賃借人が賃貸人の承諾を得ずに賃借地を無断で転貸した場合、賃貸人は契約を解除できるとされています。
しかし、この解除権の行使には例外があり、無断転貸が賃貸人に対する背信行為と認められない特段の事情がある場合には、賃貸人は解除権を行使できないとされています。
- 特段の事情の主張・立証責任
最高裁は、この「特段の事情」の存在については、賃借人側が主張し、立証する責任があるとしています。
つまり、無断転貸が背信行為に当たらないような特別な事情がある場合、その事情を主張し、証拠を提出するのは賃借人の義務であるということです。
- 本件における賃借人の立証不足
本件では、賃借人である上告人が「特段の事情」について主張や立証を行っておらず、裁判所もその点について釈明権を行使しませんでした。
しかし、最高裁は、これによって原判決に違法性はないと判断しました。
つまり、賃借人が特段の事情を立証しなかった以上、原審がその点を詳しく尋ねなかったとしても問題ないという判断です。
- 結論
この裁判の重要なポイントは、無断転貸に関して背信行為と認められない特段の事情がある場合、賃貸人は契約を解除できないが、その特段の事情の主張・立証責任は賃借人にあるという点です。
本件では賃借人がこの点を主張・立証しなかったため、賃貸人による解除が有効とされました。
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