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境界確定の訴えと取得時効は別問題

 この裁判(昭和43年2月22日最高裁判決、昭和42(オ)718)では、「境界確定の訴え」と「取得時効」に関する重要な見解が示されました。

 

最高裁判所の見解

  • 境界確定の訴えの性質

 境界確定の訴えは、隣接する土地の境界が事実上不明で争いが生じた際に、裁判によってその境界を新たに確定することを求めるものです。

 

 この訴えは、土地所有権の範囲を確認することを目的としていない、という点が重要です。

 

 つまり、境界確定の訴えは、土地の所有権そのものに関わる問題ではなく、単に物理的な境界を確定する手続きに過ぎないということです。

  • 取得時効の抗弁の無関係性

 上告人は取得時効を主張しましたが、最高裁はこの抗弁は境界確定の訴えに無関係であると述べました。

 

 理由として、たとえ上告人が時効によって一部の土地を取得したとしても、それによって隣接する土地の境界が自動的に移動するわけではないからです。

 

 境界確定の訴えは土地の物理的な境界に関するものであり、時効取得による所有権の変更とは異なる手続きです。

  • 別途の所有権確認の訴えの必要性

 もし上告人が時効取得によって特定の土地の一部を所有していることを主張する場合は、境界確定の訴えではなく、別途その土地について「所有権確認の訴え」を起こす必要があると指摘されています。

  • 結論

 この裁判のポイントは、境界確定の訴えは所有権の範囲を争うものではなく、取得時効の抗弁は境界確定には無関係であるという点です。

 

 もし時効取得を主張するのであれば、別途所有権確認の訴えを提起する必要があることが明示されました。