この判決(昭和36年4月27日、事件番号昭和33(オ)619)では、裁判所が当事者の主張がなくても民法第90条の公序良俗違反を理由に契約を無効と判断できるかが問題となりました。
判決の要点:
- 裁判所の判断権限:
最高裁判所は、当事者が特に民法第90条による無効の主張をしなくても、当該事実が公序良俗に反する場合、裁判所は自らその契約が無効であると判断できるとしています。
つまり、裁判所は公序良俗違反に該当する事実の陳述さえあれば、民法第90条に基づいて契約の無効性を判断することができると認めています。
- 事実認定と公序良俗違反の判断:
本件において、原告は一審から被告が共謀して不動産を横領し、刑事訴追を受けるなどの不法行為を主張しており、原審(控訴審)はこれを事実認定しました。
その上で、不法行為が公序良俗に反すると判断され、契約が無効であるとされています。
したがって、当事者が直接公序良俗違反を主張していなくても、裁判所は事実に基づき無効判断を行ったことに違法はないとされています。
- 廉価の問題について:
判決文において、裁判所は「本件山林の代金が著しく廉価であることだけで公序良俗に反すると判断したわけではない」ことを明確にしています。
したがって、単に取引条件が不合理であることだけで公序良俗違反とされるわけではなく、当該行為により社会的秩序や善良な風俗が侵害された事実があることが重要です。
- 結論:
この判決は、裁判所が民法第90条(公序良俗違反)に基づいて契約の無効を判断する際、当事者の明確な主張がなくても、事実関係に基づいてその判断を下すことができることを確認しています。
特に、不法行為や共謀など、社会的に問題のある行為が認められた場合、裁判所は自発的に契約が無効であると判断できるという点が強調されています。
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