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委託者指図型投資信託の受益権の性質

 この最高裁判決(平成26年12月12日、事件番号平成24(受)2675)は、共同相続された委託者指図型投資信託の受益権に関するものです。

 

 この事件では、相続開始後に発生した元本償還金や収益分配金が被相続人名義の口座に入金された場合、共同相続人の一人が自己の相続分に相当する金額を請求できるかが争われました。

 

最高裁判所の見解:

  • 委託者指図型投資信託の受益権の性質:

 委託者指図型投資信託(投資信託及び投資法人に関する法律第2条第1項に基づくもの)の受益権は、共同相続されたとしても、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないとされています。

 

 これは過去の最高裁判決でも確認されています(平成23年(受)第2250号、平成26年2月25日判決)。

 

  • 元本償還金および収益分配金の交付権:

 元本償還金や収益分配金の交付を受ける権利は、投資信託の受益権の一部を構成するものであり、この権利も相続開始後に当然に分割されることはありません。

 

 したがって、これらの金額が販売会社に預けられた場合、その預り金の返還請求権も相続分に応じて分割されることはなく、共同相続人の一人が自分の相続分に相当する金額を単独で請求することはできないとされました。

  • 結論:

 共同相続人の一人は、委託者指図型投資信託の販売会社に対して、自己の相続分に応じた金額の支払いを単独で請求することはできないという判断が示されました。

 

 これは、相続における投資信託の受益権やその元本償還金、収益分配金が、共同相続人全体の権利として扱われるべきであることを強調しています。

  • この判決の意義:

 この判決は、投資信託における相続の取り扱いについての重要な基準を示しており、共同相続人間での遺産の分割や処理の方法に注意を促すものです。

 

 相続財産が複雑化する現代において、投資信託のような金融資産の取り扱いに関する法的な判断基準を明確にする役割を果たしています。