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遺産確認の訴えの適法性

 この裁判(昭和61年3月13日最高裁判決)では、共同相続人間での特定の財産が被相続人の遺産に属することの確認を求める「遺産確認の訴え」の適法性について、最高裁判所の見解が示されています。

 

最高裁判所の見解

  • 共同相続人間での財産確認訴訟の許容性:

 共同相続人の範囲や各法定相続分の割合について実質的な争いがない場合において、ある特定の財産が被相続人の遺産に属するかどうかを争うことができると認められています。

 

 具体的には、相続人が特定の財産について、法定相続分に応じた共有持分を有することの確認を求める訴えを提起することは許されるとされています。

  • 判決の効力と限界:

 この訴えにおける勝訴判決は、原告が当該財産について法定相続分に応じた共有持分を有することを確定するものですが、その取得原因が被相続人からの相続であることまで確定するものではありません。

 

 したがって、遺産分割の審判が確定しても、その審判における遺産の帰属に関する判断は既判力を有しないため、その後の民事訴訟で当該財産が遺産に属しないと判断されれば、その審判も効力を失う可能性があります。

  • 遺産確認の訴えの適法性:

 遺産確認の訴えは、特定の財産が現に被相続人の遺産に属すること(つまり、その財産が共同相続人による遺産分割前の共有関係にあること)を確認する訴えです。

 

 この訴えの勝訴判決は、当該財産が遺産分割の対象であることを既判力をもって確定するため、その後の遺産分割審判手続やその審判の確定後に、当該財産の遺産帰属を争うことはできなくなります。よって、この訴えは適法とされます。

  • 民法上の共有との違い:

 共同相続人が分割前の遺産を共同所有する法律関係は、民法第249条以下に規定する共有とは異なる性質を持っています。

 

 具体的には、共同所有関係の解消のためにとるべき裁判手続きが遺産分割審判であり、通常の共有物分割訴訟とは異なり、所有権取得の効力にも違いがあります。

 

 そのため、この違いから生じる必要性に基づき、「遺産確認の訴え」を認めることは正当であるとされています。

  • まとめ

 この判決により、「遺産確認の訴え」が、共同相続人間において特定の財産が被相続人の遺産に属することを確定するための有効な手段であることが確認されました。

 

 この訴えは、遺産分割の前提問題として、特定の財産の遺産帰属についての争いを解決するために適法であると認められます。