この裁判(昭和39年3月6日最高裁判決)では、不動産の遺贈と民法第177条の「第三者」について最高裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
- 不動産の贈与と登記の関係:
不動産の所有者がその不動産を他人に贈与しても、その贈与の旨が登記されない限り、完全に排他性のある権利変動を生じることはありません。
つまり、所有者は無権利者とはならないと解されています。
遺贈も同様であり、遺言によって受遺者に財産権を与える意思表示に基づくものです。
遺言者の死亡を不確定期限とするものではありますが、物権変動の効果を生じる点においては贈与と変わりはないとしています。
- 遺贈の効力と登記の必要性:
遺贈が効力を生じた場合でも、遺贈を原因とする所有権移転の登記がなされない限り、完全に排他的な権利変動は生じないと解されます。
民法第177条は、物権の得喪や変更について、登記をもって対抗要件とすることを広く規定しています。この趣旨から、遺贈がその例外とされる理由はなく、遺贈の場合にも不動産の二重譲渡などと同様に、登記が物権変動の対抗要件とされるべきと解されます。
- まとめ
この判決により、以下のことが明確にされました:
不動産の遺贈においても、登記をしない限り、受遺者は第三者に対して遺贈を主張することはできないということです。
したがって、遺贈も不動産の贈与と同様に、物権変動の対抗要件として登記が必要であるとされます。
これは、遺贈が贈与と同様に登記を必要とすることを示しており、受遺者が第三者に対して自己の権利を主張するためには、登記を完了する必要があるという原則を再確認した判例です。
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