· 

相続の方が納税負担が少ない理由

 相続の方が納税負担が少ない理由

 一般的に、家を譲る場合には相続の方が納税負担が少なくなることが多いです。

 その理由を以下で見ていきます。

 

1. 相続税の基礎控除の適用

 相続税には「基礎控除」があり、相続税のかからない枠が設けられています。

 例えば、夫が亡くなった場合、家族構成が夫、妻、娘、息子の4人であれば、基礎控除額は以下のように計算されます。

 相続税の基礎控除額= 3,000万円 + 法定相続人の数(3人) × 600万円 = 4,800万円

 このシミュレーションによると、全財産(現金2,000万円+家3,000万円=5,000万円)を相続しても、相続税は基礎控除額を超える200万円の部分にのみかかり、税率が10%の場合、相続税額は20万円となります。

 

2. 贈与税の課税

 一方、生前贈与には「暦年贈与」と「相続時精算課税」の2種類がありますが、特に相続時精算課税の場合、2,500万円を超える部分については一律20%の贈与税が課されます。  

 例えば、3,000万円の家を生前贈与すると、贈与税は以下のようになります。

 贈与税= (3,000万円 - 2,500万円) × 20% = 100万円

 

3. その他の税金(登録免許税・不動産取得税)

 生前贈与では、相続に比べて「登録免許税」や「不動産取得税」が高額になります。

  • 登録免許税:

 家の価格の2%(生前贈与) vs. 0.4%(相続)

  • 不動産取得税:

 生前贈与の場合は1.5〜4%、相続の場合は0%

 

 例えば、3,000万円の家の場合、登録免許税と不動産取得税を合計すると、生前贈与で約105万円〜180万円かかるのに対し、相続の場合は12万円程度です。

 

「生前贈与のほうが有利な場合」

 相続争いのリスクが高い場合や、相続後に特定の人に家を引き継いで住んでほしい場合など、特定の状況では生前贈与が有利になることもあります。

 

1. 相続争いのリスクが高い場合

 相続では、不動産が火種となって相続争いに発展するケースが少なくありません。

 特に家などの不動産は平等に分けることが難しいため、相続が争いに発展するリスクがあります。

 生前贈与により家を譲ることで、相続時の争いを未然に防ぐことができます。

 

2. 相続後に特定の人に住んでほしい場合

 例えば、配偶者が老人ホームに入りたい、子どもたちはすでに持ち家がある場合、孫など相続人ではない人に家を譲りたい場合には、生前贈与を検討する価値があります。

 

3. その他の特定状況

 不動産を売却せずに持ち続け、価値が上がる可能性が高い場合

 複数の不動産を所有している場合(都市部の家と地方の土地など)

 

結論

 多くのケースでは、家を相続した方が税負担が少なくなることが一般的ですが、相続争いのリスクや相続後の家の使用方法など、家族の状況によっては生前贈与が有利になる場合もあります。

 相続と生前贈与のどちらが最適かは、個々の状況や目指すべきゴールによって異なるため、専門家と相談しながら検討することが重要です。