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遺言書が存在する場合でも

 遺言書が存在する場合でも、相続におけるトラブルを完全に防ぐことは難しいケースが多々あります。以下は、遺言書があっても問題が発生しやすい具体的なケースです。

 

1. 不動産が絡む場合の不公平

 不動産は、その価値が変動するため、遺産分割において不公平が生じやすいです。

 遺言書が作成された時点の不動産の評価と、実際に相続が発生した時点での評価が異なることが原因です。

 

 この違いにより、遺留分を侵害する可能性が高まり、相続人間で不満が生じることがあります。

 例えば、遺言書が作成された時点では不動産の価値が低かったものの、相続時には大幅に値上がりしていた場合、他の相続人が「不公平だ」と感じることがあります。

 このような場合、「遺留分侵害額請求」が発生し、調停や訴訟に至ることもあります。

 

2. 遺言書の信ぴょう性に関する疑念

 遺言書が手書きで作成された場合や、亡くなる直前に書かれた遺言書については、その信ぴょう性が疑われることがあります。

特に以下のようなケースで問題が発生します:

  • 遺言書の偽造疑惑:

 字が震えていたり、内容が普段の意思とは異なる場合、他の相続人から「本当に本人が書いたのか?」と疑われることがあります。

  • 認知症の疑い:

 被相続人が遺言書作成時に認知症だった場合、その遺言書の有効性が問われることがあり、「遺言書無効確認訴訟」に発展することがあります。

 

3. 財産の使い込みが疑われるケース

 遺言書があるにもかかわらず、相続財産が減少している場合には、相続人の一部が財産を使い込んでいると疑われることがあります。

 

 このようなケースでは、通帳や財産の管理状況を詳細に調査する必要があり、以下のような問題が生じます:

  • 調査の長期化:

 通帳の過去の履歴をすべて調査し、使い込みの有無を確認する必要があり、これが非常に時間がかかることがあります。

 場合によっては2年から3年かかることもあります。

  • 反発とストレス:

 使い込みを疑われた相続人からの反発も強く、解決までの道のりが困難で、相続人全員にとって大きなストレスとなることがあります。

 

まとめ

 遺言書がある場合でも、全てのトラブルを防ぐことは難しく、不動産の評価や遺言書の有効性、財産の使い込みなど、さまざまな問題が発生する可能性があります。

 

 これらの問題を防ぐためには、遺言書を作成する際にできるだけ詳細に記述し、公正証書遺言の形で法的に強固なものにすることが推奨されます。

 

 また、相続が発生した際には、早期に専門家に相談し、適切な対応を取ることが重要です。