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不動産M&Aとは、不動産を所有する会社を対象にしたM&A

「不動産M&A」とは、不動産を所有する会社を対象にしたM&A(Mergers and Acquisitions:合併と買収)のことで、特に不動産のみを所有する資産管理会社(不動産賃貸業)のM&Aについて説明します。

  • 不動産M&Aの目的と特徴

 目的:

 一般的なM&Aの目的は「会社または事業全体の譲渡」ですが、不動産M&Aの目的は「不動産の譲渡」です。

 特徴:

 不動産M&Aは、不動産の所有権を売買するのではなく、「不動産を所有している会社の株式」を譲渡の対象とします。

 つまり、株式譲渡の形で不動産を含む会社ごと譲渡します。

 

不動産M&Aと不動産売買の違い

  • 不動産売買:

手続き:

 不動産そのものを売却し、売却益に対して法人税が課税されます。

課税:

 不動産の売却益に対して法人税が課され、その後の配当金に対して株主に所得税が課されます。

  • 不動産M&A:

手続き:

 会社が所有するすべての株式を譲渡することで不動産を含む法人ごと移転します。

課税:

 株式譲渡益に対して約20%の申告分離課税が適用されます。

 買い手側には不動産取得税や登録免許税がかかりません。

 

スキームの違いと手残り額の比較

  • 不動産売買の場合:

 帳簿上1億円、時価2億円の不動産を売却すると、1億円の売却益に対して約35%(約3,500万円)の法人税が課されます。

 法人税を差し引いた1億6,500万円が株主への配当金となり、その配当金に対して最高税率約55%の所得税が課されます。

 最終的な手残り額は売却価額の約半分となります。

  • 不動産M&Aの場合:

 同じ条件で株式を譲渡すると、2億円の株式譲渡益に対して約20%(約4,000万円)の申告分離課税が課されます。

 最終的な手残り額は、不動産売買に比べて大きくなります。

 

税金面のメリット

  • 売り手側:

 不動産売買に比べて税負担が軽減され、手残り額が多くなります。

  • 買い手側:

 不動産取得税や登録免許税がかからず、株式の取得価額の一部を損金算入できる「経営資源集約化税制」の特例を活用できます。

 

専門家の必要性

 不動産M&Aは、高度な専門性が求められます。

 税理士や不動産鑑定士のサポートを受け、適正な不動産評価や株価の算定を行うことが重要です。

 不動産の売却を検討している場合、不動産M&Aも有益な手段として捉え、専門家に相談することをおすすめします。

 このように、「不動産M&A」は、不動産の売買に伴う税負担を軽減しつつ、効率的に不動産を譲渡するための有力な手法です。