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、相続が発生する際の懸念点がいくつか

 お父様の危篤状態とお母様の認知症の兆候により、相続が発生する際の懸念点がいくつか考えられます。以下に説明します。

 

1. 遺産分割協議ができない

 遺産分割協議は相続人全員が参加する必要がありますが、認知症を患っているお母様が参加できない場合、協議が無効になる可能性があります。

 この問題を解決するためには、成年後見制度を利用してお母様の成年後見人を選任する必要があります。

 

2. 銀行口座の凍結

 認知症の相続人が相続した財産は、銀行口座に入金されても凍結されることがあります。

 口座が凍結されると、医療費や老人ホームの入居費用、日々の生活費の引き出しができなくなり、家族が一時的に負担することになります。

 この場合も、成年後見制度を利用して後見人に管理を任せることが考えられます。

 

3. 不動産の管理と売買契約

 認知症の相続人は不動産の売買契約の当事者になれないため、財産管理や遺産分割協議も難しくなります。

 成年後見人が選任されれば、不動産の管理や売買契約を代行することができますが、成年後見制度にはデメリットもあります。

 

4. 不動産の管理

 認知症の相続人が不動産を相続すると、管理が難しくなります。

 成年後見制度を利用して後見人が管理を行う必要がありますが、この制度の利用には費用や自由に財産を使えないなどのデメリットがあります。

 

成年後見制度のデメリット

  • 費用負担:

 成年後見人に月々1万円程度の報酬が必要。

  • 監督人の選任:

 親族が成年後見人になっても、監督人がつく場合があり、その報酬も必要。

  • 財産の自由な使用が難しい:

 制度は財産を守るためのものであり、相続財産の自由な使用が制限される。

  • 変更や取り消しが難しい:

 一度利用すると、制度の取り消しは困難。

 

成年後見制度の利用を回避する方法

 成年後見制度を利用せずに相続をスムーズに行うためには、事前に以下の対策が考えられます。

1. 家族信託

 家族信託を活用することで、認知症の方の財産管理を信頼できる家族に任せることができます。

 信託契約により、財産の管理や運用、処分を柔軟に行うことが可能です。

 

2. 任意後見制度

 任意後見制度は、本人が元気なうちに信頼できる人を任意後見人として選任し、必要なときに家庭裁判所に後見人としての役割を開始してもらう制度です。

 これにより、認知症の兆候が出始めた段階でスムーズに後見人を選任し、財産管理を行うことができます。

 

3. 生前贈与

 生前に財産を贈与することで、相続時のトラブルを減らすことができます。

 贈与税がかかる場合がありますが、年間110万円以下の贈与であれば贈与税がかかりません。

 

4. 遺言書の作成

 遺言書を作成することで、相続人間のトラブルを防ぎ、遺産分割の方法を指定することができます。

 遺言執行者を指定しておくことで、遺言の内容を確実に実行することができます。

 

 これらの対策を講じることで、認知症の方が相続に関与する際の問題を回避し、スムーズな相続手続きを進めることができます。

 具体的な対応については、専門家に相談することをお勧めします。