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遺産を一銭たりとも渡したくないという状況に対して、法的にどのような手段があるのか

 遺産を一銭たりとも渡したくないという状況に対して、法的にどのような手段があるのか、また、それらをどのように活用するかについて見ていきます。

  • 特別受益の持ち戻し

 特別受益の持ち戻しは、生前に被相続人から贈与(特別受益)を受けていた相続人がいる場合に、遺産分割時にその贈与を考慮して遺産を公平に分けるための制度です。

 例:

  • 父親が亡くなり、相続人は兄と妹の2人。
  • 父親の遺産は2,000万円。
  • 兄は生前に父親から1,000万円の贈与を受けていた。
  • この場合、遺産2,000万円に兄の特別受益1,000万円を加えて、3,000万円を基準に遺産分割を行います。
  • 兄と妹の法定相続分は1,500万円ずつ。
  • 兄は既に1,000万円を受け取っているため、相続するのは残りの500万円。
  • 妹は1,500万円を相続することになります。

寄与分

 寄与分は、相続人が被相続人の財産維持や増加に特別に貢献した場合、その貢献度に応じて遺産を多く受け取ることができる制度です。

 

認められやすいケース:

  • 親の事業や農業を無償または低額な報酬で手伝った。
  • 長期間親の介護や看護を無償または低額な報酬で行った。
  • 生活費を援助して、相続財産の目減りを防いだ。
  • 親の不動産の管理を専門業者に依頼せず行った。

特別寄与料

  • 相続人以外の親族が無償で療養看護を行った場合、特別寄与料を請求することができます。
  • 2019年7月1日に施行されたこの制度により、親族がその貢献に応じた金銭を請求することが可能です。

相続発生後の対処法

  • すでに相続が発生している場合でも、以下の方法で不公平を是正することができます。

寄与分の主張:

  • 被相続人の介護に尽力した相続人は、寄与分を主張することで、遺産分割において自らの貢献度を反映させることができます。

 

特別受益の持ち戻し:

  • 特別受益を受けた相続人がいる場合、その受益分を持ち戻して遺産分割を行うことで、他の相続人との不公平を解消します。

 

調停や審判:

  • 遺産分割協議で合意できない場合、家庭裁判所での調停や審判を通じて解決を図ります。

具体的な手続き

 

遺産分割協議:

  • 相続人全員で話し合い、遺産分割の方法を決定します。全員の合意が必要です。

家庭裁判所での調停:

  • 協議で合意できない場合、家庭裁判所に調停を申し立て、調停委員を交えて話し合いを行います。

審判:

 調停でも解決しない場合、家庭裁判所の審判により、裁判官が遺産分割の方法を決定します。

 

法律専門家への相談

 相続問題は感情が絡み合うため、複雑になりがちです。

 弁護士や税理士などの専門家に相談しながら進めることが、トラブルを避けるための重要なステップです。

 専門家のアドバイスを受けることで、最適な解決策を見つけやすくなります。