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生前贈与が認められなかった判例事案

生前贈与が認められなかった判例事案の概要

 

 認知症を患っていた80歳の贈与者が、相続人が4人いるにもかかわらず、相続人でない孫1人に全財産を贈与する契約書を作成しました。

 この契約書の有効性が争われた事案です(松山地方裁判所平成18年2月9日判決)。

 

判決

 贈与者の入院中の看護記録によれば、「犬のように吠える」「自分の病室がわからない」「尿失禁」「突然大声を出したり笑ったりする」等、重い認知症の進行が確認されました。

 裁判所は、このような状況下で贈与者と受贈者との間に贈与に関する意思の合致があったとは認められず、本件贈与契約は効力を有しないと判示しました。

 

 認知症になる前に早めにやっておくべき相続対策遺言書の作成

 判断能力が十分なうちに遺言書を作成することで、相続発生時に相続人が遺言書の内容に従って遺産分配を実行できます。

 

遺言書の種類:

  • 自筆証書遺言: 遺言者が自筆で作成して保管する方式。
  • 秘密証書遺言: 遺言の存在は明確にしつつも、内容は秘密にできる方式。
  • 公正証書遺言: 遺言者の意思を公証人が直接確認し、法律に従って作成する方式。

 公正証書遺言は、破棄や改ざんの防止ができるため、安心です。

 

家族信託の利用

 自分が信頼できる家族に財産管理や運用、処分を任せる方法です。

 判断能力があるうちに受託者となる家族と契約する必要があります。

 家族信託を利用すると、一次相続の受益者の指定や二次相続以降の承継者の指定が可能です。

 遺産分割協議での揉め事を避けるために有効です。

 

認知症の人が生前贈与する場合の相談先主治医に相談

 ・認知症の人が生前贈与を行う場合、まずは主治医に相談し、意思能力の有無を判断してもらいます。

 ・弁護士に相談

 生前贈与の効力について争いが生じる可能性がある場合、弁護士に相談し、助言を受けながら対策を講じることが重要です。

 

まとめ

 認知症の親が生前贈与を行う場合は、医師の診断と弁護士の助言を受けることが必要です。

 また、認知症になる前に遺言書の作成や家族信託の利用など、早めの相続対策を行うことが重要です。

 これにより、後々のトラブルを回避し、スムーズな相続を実現できます。