認知症になった親に生前贈与をしてもらう手続きの流れ
- 主治医に生前贈与が可能かどうかを相談:
まずは主治医に相談し、贈与者が生前贈与を行う意思能力があるかどうかを確認します。
- 主治医に意思能力の有無を診断してもらう:
主治医から意思能力の診断を受けます。
意思能力があると判断された場合、カルテや診断書にその旨を記録してもらいます。
- セカンドオピニオンを受ける:
診断の信憑性を高めるため、他の医師からも診断を受け、複数の診断書を用意します。
- 生前贈与のため契約書を作成:
診断後、速やかに生前贈与契約書を作成します。
契約書には贈与内容、贈与日時、贈与方法などを明記し、贈与者と受贈者が署名・押印します。
- 生前贈与を実行:
契約書の内容に従って、生前贈与を実行します。
金銭の贈与の場合は、日付と金額が記録される口座振込を利用するのが望ましいです。
必要な書類
- 医師の診断書: 贈与者の意思能力を証明するため
- 贈与契約書: 2通作成し、贈与者と受贈者が1通ずつ保管
- 印鑑: 実印が好ましい
- 収入印紙: 不動産の贈与契約の場合に必要(無償の贈与ならば200円分)
認知症になってしまった後に起こりやすい相続トラブル
- 遺言書の有効性:
遺言書作成時に遺言者が認知症を発症している場合、意思能力の有効性が争われる可能性があります。
相続人全員が遺言の内容に納得していれば問題はありませんが、一部の相続人が異議を唱えると「遺言無効確認請求訴訟」が提起される可能性があります。
- トラブル回避のための対策:
生前贈与と同様に、遺言作成前に医師の診断を受け、意思能力があることを確認してから遺言書を作成します。
公正証書遺言を作成することで、遺言の信憑性を高めることができます。
認知症患者の生前贈与に関する裁判事例生前贈与が認められた判例
事案:
認知症を患っていた贈与者(代表取締役)が受贈者(会社関係者)に数千万円単位の贈与を行い、相続人である子が争った事案(東京高等裁判所令和2年9月29日判決)。
判決:
贈与者には軽度の脳萎縮が認められたものの、高齢化に伴う緩やかなものと判断。
受贈者への贈与は、長年の感謝の気持ちを表すものであり、贈与者の明確な意思に基づくと認定。
送金は有効な贈与契約の履行として認められました。
これらの手続きを踏むことで、認知症の親からの生前贈与を合法的に行い、後々の相続トラブルを回避することができます。
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