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賃貸人の居室内への無断立ち入り

この裁判事例は、「賃料滞納と賃貸人の居室内への無断立ち入り」に関するものです:

 

事案の概要:

  • 賃借人Xは、特約で「賃料滞納時に賃貸人は無断で立ち入りできる」とされた不動産会社Aの所有するマンションの一室を賃借していた。
  • 賃料2か月以上滞納後、管理会社Yが賃借契約の解除通知を送り、Xの不在中に無断で立ち入り、扉に施錠具を取り付け、窓の内側にも施錠具を取り付けた。
  • Xは無断での立ち入りが違法であり、特約は公序良俗に反して無効であると主張し、賠償を求めた。

主張と訴訟:

  • Xは特約が公序良俗に反し無効であり、無断での立ち入りが不法行為であるとして、慰謝料100万円の請求を行った。
  • Yは賃借契約が有効に解除されており、法的手続きを経ずにも債務の履行や退去を強制できる特別の事情があったと主張し、未払い賃料と汚損修復費用を請求した。

判決の要旨:

  • 無断での立ち入りは賃借人の平穏な生活権を侵害するものであり、特約は原則として違法で公序良俗に反して無効である。
  • 特別の事情がない限り、法的手続きを経ずに債務の履行や退去を強制することは認められない。
  • 賃貸人の従業員が立ち入ったことは違法な行為であり、賃貸人は賠償責任がある。慰謝料は5万円とされた。

まとめ:

  • この事例では、賃借人の立ち退きがない状況でも、無断での立ち入りが不法行為であり、特約が公序良俗に反して無効であるとして、損害賠償としての判決が下されました。
  • 賃貸人が法的手続きを踏まずに自力での退去措置を行う場合、特別の事情がない限り不法行為とされる可能性が示されています。