· 

被った信頼利益の損害を補償

この裁判事例は、「賃貸借契約の締結に至らなかった場合の貸主の責任」に関するものです。

 

事案の概要:

  • 賃貸ビルの建築を計画していた貸主(Y)は、不動産会社(A)に賃借人の募集と媒介を依頼。
  • 賃借希望者(X)が事務所として賃借したい旨を示し、賃貸借契約の案が作成された。
  • Xは希望どおりの内容で賃借できるものと信じ、工事も進行させたが、Yは別の団体と契約を結び、Xには契約締結の意向を伝えなかった。

 

判決の要旨:

  • 賃貸借契約の内容が詰められつつあったが、最終的に契約は成立していなかった。
  • YがXに対し契約締結の準備を進めたにもかかわらず、別の団体と契約を結んだことは信義則に反する行為とされた。
  • 貸主が相手方に対し契約の成立についての強い信頼を与えたにもかかわらず、一方的に契約交渉を打ち切った場合、信義則上、相手方が被った信頼利益の侵害による損害を賠償する責任が生じる。
  • 結果として、Yに対して損害賠償請求が認められた。

 この判決は、賃借希望者が貸主の契約締結上の過失によって被った信頼利益の損害を補償する公平な措置を示しています。