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公営住宅の明け渡し時における通常損耗

 公営住宅の明け渡し時における通常損耗による補修費用に関する裁判事例であり、賃借人の負担とされたケースです。

 

事案の概要:

  • 平成5年3月、賃借人(X)と賃貸人(Y)の間で公営住宅の賃貸借契約を締結。
  • 賃貸借契約は平成15年4月30日に終了し、XはYに対して物件を明け渡し。
  • Yは、物件の明け渡しに伴う補修費用として8万円余をXに請求。

 

判決の要旨:

  • 公営住宅は特殊な契約条件が存在し、公営住宅法の特則と一般法(民法、借地借家法など)の適用がある。
  • 公営住宅の家賃は通常の住宅に比べて低廉であり、建物の減価分も毎年減額されているため、通常の住宅使用による自然減価分が毎月の家賃に含まれているとは言えない。
  • 公営住宅の使用関係においては、契約の特殊性と実務の慣行を総合的に判断し、通常損耗部分は家賃に含まれていないとの判決。
  • 入居者の負担義務が明確に規定されていなくても、公営住宅の使用に関する契約の特殊性を考慮し、賃借人の請求は理由がないと判断。

 

まとめ:

  • 判決は、公営住宅の契約条件や低廉な家賃、減価分の取扱いを総合的に考慮し、通常損耗による補修費用は賃借人の負担ではないと判示しています。