大阪高裁の平成15年11月21日の判決に基づく特優賃住宅における原状回復特約に関するトラブル事例を要約しています。
事案の概要:
- 賃借人(X)は、特優賃住宅の賃貸契約を結び、入居した。
- 賃借人が契約終了後、住宅を明渡した際に、賃貸人(Y)がクロス貼替・玄関鍵取替などの住宅復旧費用として21万円を敷金から差し引き、残額を返還した。
主張と裁判経過:
- 賃借人(X)は、通常損耗分を賃借人負担とする趣旨の文言が契約になく、新たな義務を負担する合意がなかったとして、原状回復特約の存在を否定し、差し引かれた金額の返還を求めて提訴した。
- 一審裁判所は(X)の請求を棄却し、賃借人は不服として控訴した。
判決の要旨:
- 契約17条1項は通常損耗を賃貸人の負担とする趣旨だが、他の文書では通常損耗を賃借人負担とする趣旨があり、これが契約本文と齟齬するとしている。
- 通常損耗による原状回復費用は、特約がない限り、賃料とは別に賃借人に負担させることはできないと判断された。
- 特約の成立には賃借人が趣旨を理解し、自由な意思に基づいて同意したことが必要であり、形式的手続きだけでは成立しないとされた。
まとめ:
- 通常、契約自由の原則から特約を設けることは認められるが、賃借人に特別な負担を課す特約は客観的で合理的な理由が必要とされる。
- 司法や行政の流れでは、賃借人に不利な条項は否定される傾向があり、特に居住用賃貸借においては慎重な審査が行われている。
- この判例から得られる教訓は、特に契約の明確な合意や客観的・合理的な理由なしに賃借人に不利な特約を設けることは避けるべきだと言えます。
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