信託によって財産の所有権と経済価値が分離され、そのメリットや税務上のポイントについてです。
1. 財産の所有権と経済価値の分離
信託契約による分離
信託を行うことで、財産の所有権(法的形式)と経済価値が分離される。
不動産の所有権は受託者(例: 長女)に移転し、経済価値は受益者(例: 父親)が持ち続ける。
2. 分離のメリット
手続きの簡略化
所有権と経済価値が分離されるため、利益の移転を煩雑な手続きなしに行える。
登記手続きや第三者対抗要件をクリアせずに、利益の移転が可能。
信託財産の破産への影響:
委託者や受託者が破産しても、信託財産は独立したものとして取り扱われ、弁済に充てる必要がない。
3. 税務上のポイント
受益者課税信託
信託の税務は、受益者課税信託が一般的。
受益者が財産を所有していなくても、経済価値に対して課税され、所得の申告が行われる。
経済価値の移転と課税
受益者が変更される場合や他益信託の経済価値の移転がある場合、贈与税や相続税が課される可能性あり。
4. 受益権の相続税評価
信託財産の相続税評価:
経済価値の移転に伴い、受益者に贈与税や相続税が課される場合、受益権の相続税評価は信託財産そのものの評価額と同じになる。
評価減特例の適用:
特定の不動産が評価減の特例の対象となる場合、その評価減を受益権の評価にも反映させることができる。
課税上の取扱い:
信託を設定しても個人の財産を信託した場合でも、課税上の取扱いが不利になることはない。
5. 自益信託と他益信託
自益信託(委託者と受益者が同一):
財産管理を信託によって行う場合、自益信託となり、贈与税は課されない。
認知症患者が賃貸不動産の管理を家族に委託する場合、自益信託を用いても課税されない。
他益信託(委託者と受益者が異なる):
財産の利益が異なる者に移転する場合、他益信託となり、贈与税が課される。
障害者の利益を得るために親が賃貸不動産の利益を信託する場合、他益信託となり、贈与税が課される。
6. 受益者が得る収益に対する課税
課税対象:
不動産所得が発生し、受益者がそれを所得として得た場合、所得税が課される。
父親の場合:
父親が所得を受け取る場合、財産を信託した後でも課税の対象になり、所得税が課される。
7. 信託登記の目的
債権者保護:
不動産を信託財産とする場合、登記を行い、信託財産が受託者固有の財産でないことを明らかにする。
8. 信託の登記事項
登記事項:
委託者、受託者、受益者の名称・住所など、信託に関する重要な事項を登記する。
9. 信託登記に伴う登録免許税
登録免許税:
不動産の信託登記には登録免許税ではなく、登記免許税が発生する。
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