成年被後見人とは
「成年被後見人(せいねんひこうけんにん)」とは、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況」にあり、成年後見制度を利用して保護または支援を受ける人(本人)を指します。
一方、支援する側を「成年後見人」と言います。
「事理を弁識する能力(事理弁識能力)」とは、法律行為の結果を判断することができる能力、とされています。
難しい言葉ですが、たとえば「自宅を売ることによって、自分が得をするのか損をするのかを合理的に判断することができるのか?」といった能力です。
ここでは、事理弁識能力を、単に「判断能力」という言葉で説明を進めます。
1-1. 成年後見制度の概要
成年後見制度とは、認知症、知的障害、精神障害などの精神上の障害により判断能力が低下した本人を保護したり支援したりする制度です。
判断能力が低下した本人が、たとえば何かの契約をしようとする場合に、契約内容や結果についてよくわからないまま締結してしまい、不利益を被ることがあります。
あるいは、本人の判断能力の低下に乗じて、悪徳商法などの消費者被害に遭うことも考えられます。
家庭裁判所から選任された成年後見人は、本人がこのような被害に遭って損害を被らないように配慮しながら、本人がきちんと生活できるように、本人の代理人として契約締結や本人の財産管理などを通じて、本人をサポートします。
成年後見制度とは
1-2. 成年被後見人と被保佐人・被補助人の違い
すでに述べたとおり、成年後見制度は、認知症など精神上の障害によって判断能力が低下した人を保護、または支援する制度として存在しています。
ただし、精神上の障害と言っても、障害の程度はさまざまです。その障害によりサポートを必要とする内容や範囲も人それぞれです。
そこで、成年後見制度は、本人の判断能力の低下具合やサポートの必要性に応じて、本人ができるところは本人が行い、本人が行うのが難しいところは成年後見人などがサポートできるように、成年後見、保佐、補助の3つの類型を用意しています。
本人にサポートする範囲が広い順から成年被後見人、被保佐人、被補助人と続きます。
法律上、成年被後見人、被保佐人、被補助人の各類型に関する判断能力の程度を下記のとおり定義しています。
- 成年被後見人:判断能力が欠けているのが通常の状態の人
- 被保佐人:判断能力が著しく不十分な人
- 被補助人:判断能力が不十分な人
本人がどの類型になるのかは、家庭裁判所が主治医の診断書などを総合的に考慮して決定します。
そして、家庭裁判所は、成年後見制度を利用すべきと判断した場合には、それぞれ、成年後見人、保佐人、補助人を選任します。
本人の判断能力が低いほどサポートする側の権限の範囲は広く、反対に本人の判断能力が高いほどサポートする側の権限の範囲は狭くなります。
たとえば、権限が最も広い成年後見人は、本人に代わって契約などの法律行為を行える「代理権」、本人が行った売買契約などの法律行為をあとから取り消せる「取消権」を持ちます。
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